離婚

離婚裁判に弁護士への依頼は必要?裁判を有利に進めるために

  離婚裁判に弁護士への依頼は必要?裁判を有利に進めるために

1.離婚裁判とは

夫婦が離婚する時には、二人で築き上げた財産をどう分けるか、また子供がいる場合にはどちらが引き取るかなど、決めなければいけないことがいくつかあります

また、片方は別れたいと思っているのにもう片方は別れたくないと思っている場合にも、二人だけで話し合っていたのでは平行線のままかもしれませんよね。

当事者同士の協議でうまく納得できれば良いのですが、納得できない場合には、第三者を含めて話し合いを行う調停を申し立てることになりますし、調停でも決められない場合や納得できない場合には、訴訟を起こして離婚裁判を行うことになります。

離婚する夫婦のすべてが裁判を行うわけではなく、実際に裁判によって最終的な決断が下されるのは、全体の1%~2%程度と言われています。

離婚に向けた裁判は、妻の側から申し立てても良いですし、夫の側から申し立てることもできます。裁判で話し合われる争点となるのは、離婚するに値する法的な原因があるのかどうかという点で、どちらか一方が別れたいと思っているのにもう一方が納得しないという場合などには、法的に離婚の申し立てが認められるかどうかについて裁判所で争うことになるわけですね。

お互いに離婚することに対しては同意しているけれど、その際の条件で同意できていない場合には、焦点を絞り込んで裁判で争うことになります。

争点の中には、離婚に際して慰謝料を払うのかどうか、どちらがいくら払うのが妥当なのかという点がありますし、財産がある場合には、財産分与はどうするのかという点、その場合には持っている資産をどういう風に分与するのかという具体的な部分まで、裁判所に決めてもらうことが可能です。

夫婦の間に子供がいる場合には、親権はどちらが持つのかという点が争点になることも珍しくありません。夫婦どちらも子供を引き取りたいと強く願っている際には、どちらが親権を持った方が子供にとって有益なのかという点を話し合うわけですね。

離婚のための裁判は、別れる夫婦にとっては最終手段という選択肢となります。裁判になれば弁護士を雇わなければいけませんから費用が掛かりますし、離婚が成立するまでに時間もかかってしまいます。お互いに精神的な負担は大きくなるでしょうし、子供がいる場合には、子供の精神面への負担も心配ですよね。できれば協議離婚するのが理想的なのかもしれませんが、どうしても納得できない場合には調停を経て裁判によって離婚することも、選択肢の1つとなっています。

離婚裁判の争点になるポイント

  • 離婚に値する法的な原因があるか
  • 慰謝料を払うかどうか、またいくら払うのか
  • 財産分与の方法
  • 親権について

2.離婚裁判の流れと手続

離婚に向けた裁判は、結婚している夫婦なら誰でも申し立てることができます。しかし、別れたいから裁判を申し立てても、すぐに受理されるわけではありません。

裁判を経ての離婚はあくまでも最終手段なので、まずは夫婦で話し合いをして協議離婚を目指すことが必要不可欠です。協議離婚がどうしても難しいという場合には、離婚調停を申し立て、家庭裁判所の調停のプロセスを経たうえで、裁判にするかどうかを決めることになります。離婚調停を経ていない場合には、離婚の裁判を申し立てても受理してもらうことはできないので、注意してください。

裁判を申し立てるには条件が必要

離婚に向けた裁判を申し立てる際には、いくつかの条件が必要となります。

不貞行為

1つ目は、配偶者が不倫など「不貞行為」をした場合が挙げられます。この場合、不貞を働いた側が別れたいと言ってもそれは理由として認められることはなく、不貞をされた側がもう耐えられないという理由で裁判を申し立てた場合のみ、離婚理由として認められることになります。

悪意の遺棄

2つ目は、「悪意の遺棄」があります。これは、扶養の義務を怠ったとか、相手に同居を拒まれたとか、夫婦生活の協力を拒まれた場合などが該当します。具体的には、結婚しているのに家に入れてもらえない日がずっと続いたり、家庭にお金を入れてくれなかったりする場合が該当しますね。

相手の生死が不明

3つ目は、「相手の生死が不明」という点が挙げられます。例えば配偶者が家を出て行ったきり連絡もなく、どこにいるのかも分からないし、生きているのか死んでいるのかもわからないという場合には、生死不明の状態が3年以上続いた場合に離婚に向けた裁判の申し立てをすることができます

強度の精神病

4つ目は、相手が「強度の精神病」であり、回復する見込みがない場合があります。自分が精神病にかかったから離婚したいと裁判を起こしても認められませんし、配偶者が精神病だと診断された場合でも、回復する見込みがある場合には離婚理由としては認めてもらうことはできません。

そのほかの重大な事由

5つ目には、「そのほかの重大な事由」があります。これは、何年も別居生活が続いているから別れたいとか、配偶者からDVを受けているとか、性格がどうしても合わないから婚姻関係を続けることは難しい等がありますね。はっきりとした離婚の理由がある場合には、裁判を申し立てる理由として十分だと判断してもらうことができますが、ただ相手のことが好きではないという漠然とした理由だけでは、なかなか裁判の申し立てをしても離婚理由として認めてもらうことは難しいようです。

実際の離婚裁判手続きの流れ

裁判を申し立てる手続きについてですが、最初の申し立ては、本人が行っても弁護士が代理で行ってもOKです。

裁判所へ訴状を提出すると、口頭弁論を行う日程が決められて、郵送で通知されて裁判が開始となります。口頭弁論は1回だけではなく、複数回行われた上で、判決という形で判断が下されることになります。

もしも判定に納得できない場合には、地方裁判所や高等裁判所などの上級裁判所に控訴をするという選択肢もあります。

裁判を行うという最初の通知は、裁判を起こした側にも起こされた側にも、どちらにも郵送で通知されます。

しかし、生死不明など相手がどこにいるのか全く分からない場合には、郵送で通知することが難しいですよね。その場合には、公示送達という形をとることになります。公示送達というのは、裁判所にある掲示板に書類を掲示することで、口頭弁論の日程を相手にも送ったことにできるという代替法です。

裁判所によって指定された口頭弁論の日には、夫婦どちらも出席することが義務付けられています。

しかし、事情があるなどいろいろな理由で欠席した場合には、欠席判決という手段が取られて、原告の申し立てがほぼそのまま全面勝訴という形で判決が下ることになりようです。

ただし、これは原告の言い分に間違いがないことが大堰堤となっているため、判決の前にはしっかりと証拠を集めて調査を行った上で慎重に判決が下されることになっています。

3.離婚裁判の期間は?

離婚のための裁判にかかる期間は、ケースバイケースで大きく異なります。例えば、相手が生死不明でどこにいるか分からないという場合には、時間がかかることなく離婚の申し立てが認められるでしょうし、相手方にも言い分があって裁判所で争いになった場合や資産や財産が複雑化している場合などには、お互いの言い分を聞きながら裁判所が慎重にベストな方法を見つけることになるので、長期化することもあります。

一般的にかかる裁判の期間は、1年程度と言われています。もちろん、毎日口頭弁論を行うわけではありませんし、口頭弁論を行う回数や間隔などはケースバイケースとなります。

また、裁判を起こされた被告の側が裁判所に出頭しない欠席裁判の場合でも、その日にそのままアッサリ原告の申し立てがすべて認められるというわけではなく、原告の言い分に間違いがないことを確かめるための調査が入るため、判決が出るまでにはある程度の期間がかかることは理解しておいた方が良いかもしれませんね。

4.離婚裁判を有利に進めるためのポイントは?

離婚に向けての裁判では、口頭弁論が複数会行われて、お互いの言い分を裁判官に聞いてもらう機会が与えられます。その際に、裁判を有利に進めるためのポイントがいくつかあるので、これからシングルマザーになる人は、感情に任せて裁判の申し立てをするのではなく、冷静沈着且つ戦略的に裁判を進めることができるような工夫をすることをおすすめします。

確実に証拠を集める

1つ目のポイントは、証拠を確実に集めるという点です。例えば配偶者に不貞行為があって離婚したいというケースでは、配偶者が本当に不貞行為をしたという証拠が裁判では必要不可欠です。

なんとなくそんな気がしたとか、相手との会話を聞いたとか、また実際に不貞現場を目撃したという場合でも、裁判所に証拠として提出できるものがなければ、残念ながら不貞行為の事実があったとしても泣き寝入りになってしまう可能性は大きいでしょう。

やったとかやらないという言い争いだけでは、残念ながら裁判所で争点にしてもらうことはできませんし、裁判を有利に進めることも難しくなります。

不貞行為を証明できる証拠については、私達素人が証拠になるだろうと考えているレベルと、裁判所が証拠として認めてくれる定義とでは、大きなずれがあります。

そのため、もしも配偶者の不貞行為に悩んでいて、離婚という文字が頭をかすめたのなら、実際にそれを裁判で証拠として使うかどうかは別として、探偵などを雇って不貞行為の証拠をつかんでおくことをおすすめします。探偵事務所なら、配偶者の不貞の有無を調査してくれるだけでなく、裁判所で有効な証拠もしっかりと入手することができます。

DVの場合は医師の診断書を用意しておく

2つ目のポイントは、DV等相手からの暴力行為に対しては、必ず医師の診断書を取ることが必要です。裁判がスタートしてからは、相手も気を付けているでしょうから、おそらく暴力行為などはないでしょう。

しかし結婚生活の間でDV行為があったという場合には、医師の診断書を取っておけばそれが離婚理由の証拠として使えます。離婚を考えたら、実際に裁判に使うかどうかは別として、証拠になるかもしれないので医師の診断書は必ず取得しておくようにしましょう。

相手の財産を把握する

3つ目のポイントは、財産分与や慰謝料の請求をする場合には、相手がどこにどのぐらいの財産を持っているのかという点についても把握しておくという点です。

現在ではマイナンバー制度がスタートしているので、資産の把握は行いやすくなっています。とはいえ、一個人の離婚のために国が資産状況を開示してくれるかどうかは分かりませんし、プライバシーの保護に触れる可能性があるので、期待することは難しいかもしれません。

そのため、離婚するかもしれないという考えが脳裏に浮かんだら、まずはコツコツと相手がどこにどのぐらいの資産を持っているのかを把握することをおすすめします。

銀行口座の口座番号まで調べなくても、銀行通帳やATMを利用した後の残高が記載されている取引明細書などでも、証拠として使える場合があります。離婚の可能性があるのなら、そうした細かい紙切れ一枚でも、念には念を入れて保管しておいた方が、後から役立つかもしれませんね。

こうした証拠があるかどうかによって、裁判では自分にとって有利になるかどうかが決まります。例えば不貞の事実があったとしても、証拠がなければ相手に「不貞なんてしてない」と逃げられてしまいますし、慰謝料の請求だって難しいかもしれません。

また、財産分与の際にも、離婚の裁判が始まってからでは資産や財産を隠されてしまう可能性が高いですから、把握するのなら相手が油断しているうちにシッカリと把握することが必要なのです。

5.離婚裁判は弁護士さんに相談した方が良い?

当事者同士の話し合いではらちが明かず、調停をしても合意できなかった離婚では、裁判を起こして法的に離婚の条件を決めてもらう際には、弁護士に相談することをおすすめします。

もしもこちらが弁護士に相談せずに自分一人で口頭弁論に臨み、相手側が弁護士を立てていたとしたら、どちらに有利になるかは明白ですよね。離婚の際には、その後の生活やライフスタイルに大きく影響してくるので、かならず弁護士に相談して、どのように裁判を進めるのかという点を決めることが必要です。

離婚裁判の相場

弁護士はボランティアではないので、依頼すると費用が掛かってしまいます。普段の生活の中で弁護士に相談する機会がある人はそれほど多くはありませんから、弁護士に依頼するとどのぐらいの費用が掛かるのか、全く見当がつかないという人は多いでしょう。具体的にいくらぐらいかかるのかについてはケースバイケースですが、相談料や着手金、成功報酬などかかる費用の合計金額では、目安としては60万円程度が一般的と言われています。

弁護士に相談するメリット

この費用を支払ってでも弁護士に依頼することには、いくつかのメリットがあります。

1つ目のメリットには、法的な書類の作成をすべて代理で行ってくれるため、難解な法的書類の作成に試行錯誤するための時間や手間を省けるという点が挙げられます。

特に、離婚に向けては夫側も妻側も仕事をしていることが多いですし、仕事から受けるストレスに加えて離婚によるストレスで、精神的にはかなり大きな負担となっていますよね。書類作成による精神的な負担ぐらいは、弁護士に任せたほうが少し気持ち的に楽になるかもしれませんね。

2つ目のメリットとしては、裁判の際には有利に進めてくれるという点が挙げられます。弁護士は法律に精通したプロですから、裁判に必要な専門知識や経験などから、どうやったら勝訴できるのかを知り尽くしています。そのための証拠集めなどもしてくれ、裁判所での話し方や攻め方についても熟知しています。有利な条件で離婚を成立させたいのなら、弁護士に依頼するのが最短だと言えるでしょう。

3つ目のメリットは、本人が裁判所に出頭する必要がない時には、代行で裁判所に足を運んでくれるという点があります。忙しい人にとっては、口頭弁論の度に仕事を休むことは難しいですよね。弁護士に依頼すれば、代行できる部分はすべて代行してもらうことが可能ですから、離婚による精神的かつスケジュール的な負担を最小限に抑えられます。

弁護士に相談するデメリット

弁護士に相談するデメリットと言えば、やはり費用面です。弁護士に相談する際には、最初に大体いくらぐらいかかるのかを教えてもらうことができますが、まとまった金額を捻出することが難しいという人は少なくありません。

弁護士事務所では、そうした面にも相談に乗ってくれる所が多いので、一人で思い込まずにぜひ気軽に相談してみてください。かかる費用を相手から受け取る慰謝料で相殺してくれることもありますし、分割払いなどで対応してくれる事務所もたくさんあります。

それに、相談料に関しては、初回は無料とか最初の1時間は無料などサービスをしてくれる事務所もあるので、上手に活用してみてはいかがでしょうか?できるだけ低コストで相談したいという場合には、法テラスに相談するという方法もありますよ。